2012年1月11日水曜日

動物名考(3) キングペンギン

Aptenodytes patagonicus Miller, 1778


キングペンギン(オウサマペンギン)


[King Penguin]



ordo: SPHENISCIFORMES Sharpe, 1891
 familia: SPHENISCIDAE Bonaparte, 1831
  genus: Aptenodytes J. F. Miller, 1778 [type: Aptenodytes patagonica Miller, 1778]
   Aptenodytes patagonicus Miller, 1778

キングペンギンの属名はAptenodytesで,この属の模式種はキングペンギンそのものですね.
属名Aptenodytesはapteno-dytesという構造で,元はギリシャ語.
apteno-は[ἀπτήν]=《男女》「未熟な」という意味のギリシャ語をラテン語の《合成前綴》化したもの.もともとは「羽がない;翼がない」という意味ですが,日本語でも「まだ毛も生えそろわない」といえば「未熟者」を意味しますね.-dytesは [ὁ δύτης]=《男》「潜水夫」をラテン語綴り化したものです.
あわせて,「未熟なダイバー」という意味になりますが,これは!,キングペンギンに対して,失礼というものですね((^^;).王様ですよ! 相手は!!.

模式種がpatagonicaになっているのに,その下の学名の方はpatagonicusになっていますね.気付いた方はエライ((^^;).
これは,属名の-dytesが《男性》なので,形容詞である種名はそれにしたがって《男性》にしなければならないのに,原著者が《女性形》を書いてしまったのですね.それで,あとで訂正されてしまったわけです.

さて,キングペンギン属に属する種について見てみましょう.
genus: Aptenodytes J. F. Miller, 1778
 Aptenodytes patagonicus J. F. Miller, 1778 [King Penguin]
  Aptenodytes patagonicus patagonicus J. F. Miller, 1778
  Aptenodytes patagonicus halli Mathews, 1911
 Aptenodytes forsteri Gray, 1844 [Emperor Penguin]
 Aptenodytes ridgeni Simpson, 1972 [Ridgen's Penguin]: E. Plioc. (New Zealand)

キングペンギンは二亜種に分ける場合もあるようです.その場合の「英名」は不明.「和名」はいくつかあるようですが,いずれも首を傾げたくなるようなもの.だから,略します.亜種名 halliの語源も不明.hall-iですから,人名「Hallの」という意味ですが,Hallが誰なのかがわかりません.ま,あまり気にしなくてもいいかと.

種名patagonicusは,patagon-icusという合成語です.Patagonは,古いスペイン語で「巨人」という意味らしいです.現在パタゴニアと呼ばれている地域の原住民が極めて背が高かったのでPatagonと呼ばれたらしい.
パタゴンの土地ですからPatagon-ia=「パタゴニア」.
種名patagonicusPatagon-icusをつけて《形容詞》化したもの.「パタゴンの;パタゴン族の」という意味ですね.

種名forsteriは,forster-iという構造で「Forsterの」という意味です.
ForsterはJohann R. Forster.Forsterは独国の博物学者で,キャプテン・クックの第二次太平洋航海に同行,5種のペンギンを命名しています.この種の英名は,[Emperor Penguin]で「コウテイペンギン(皇帝ペンギン)」と訳されています.キングより大きいので,エンペラーね.現生種ペンギンの中では最大の種だそうです.

種名ridgeniは,11歳の小学生Alan Ridgenにちなんでつけられてものです.かれは,1968年,ニュージーランドのカンタベリー地域の海岸で最初にこの化石を発見しました.そう,キングペンギン属の化石種なんです.
 

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